(元プロの)マウンテンバイクライダーとして世界で活躍した山田大五朗さんは現在、自転車のサブスクリプションサービスやクラブハウスを運営しています。これまでの経験と事業に対する想いを聞きました。山田 大五朗(ヤマダ ダイゴロウ)株式会社Bike is Life代表、サイクルコーディネーター。1978年、福岡県生まれ。17歳の時に自転車競技と出会い、プロを目指して21歳で渡仏。エクス=アン=プロヴァンスのクラブチームに所属し、2シーズンを走破。帰国後、25歳でプロ活動をスタート。29歳でワールドカップに参戦し、日本代表選手に選ばれる。以降、3年連続で日本代表として世界選手権に出場。32歳の時に、国内最長レースである24時間耐久レースで優勝。このレースを最後に引退し、現在は自転車競技の普及と若手育成活動、サイクルイベントの主催等を行う。2019年に株式会社Bike is Lifeを設立。これまでについて─これまでどこで活動していましたか?20~21歳の時に、フランスのAix-en-Provanceに2シーズン留学してました。その時はロードレースを中心に活動していたのですが、ほぼ毎日100km程走っていました。帰国してマウンテンバイクに乗り換え、25歳でプロになって、2007年から2009年までMTBクロスカントリーマラソンという競技で日本代表としてワールドカップや世界選手権に挑戦していました。フランス、ベルギー、イタリア、オーストリーに行っていたのですが、29~31歳の頃です。─すごい!それは何かチームになるんですか?フランスではチームに所属してたのですが、日本では個人でや活動していました。 マウンテンバイクの世界は、プロになる方法が2種類あります。個人でスポンサーを集めてプロになるやり方と、プロチームと呼ばれている企業が作ったチームに入るやり方があって、私は個人でスポンサーを集めて活動したので、基本的には個人で動いてました。─自転車の本場がヨーロッパで、野球でいうメジャーリーグみたいなことですか?そうです。元々、自転車競技はヨーロッパで始まったのですが、マウンテンバイクはアメリカで誕生しました。ただ、競技としてのマウンテンバイクは、ヨーロッパが強いですね。例えば、ロードレースだったらツール・ド・フランスっていうレースがあって、それは世界三大スポーツイベントのひとつなのですが、常に強い選手を輩出し続けられてるのはヨーロッパですね。日本にプロのレースがあるのですが、プロとして食べてる選手は本当一握りで、まだ道半ばという感じです。─ヨーロッパに行こうと思ったきっかけはなんですか?単純にツール・ド・フランスがあるから本場だから行こう、もうそれだけです。高校2年生のときに自転車を始めて、最初のレースで3位入賞しました。そこからプロになりたいって思いがあって我流で練習していたのですが、どうしても強くなれなくて、このまま同じことを繰り返すだけでは駄目だと思い、本場に飛び込んで揉まれようと思いました。その後、20歳のときはバイトに明け暮れて、半年間で130万貯めました。それを握りしめて、フランスに渡りました。─日本とヨーロッパで何がそんなに違うんですか?環境ですね。例えば、日本の野球で考えるとリトルリーグあって、中学・高校野球があって大学野球もあるしプロ野球もある。きっちりステップが踏めて、小学校の頃からずっと続けられる環境がある。ヨーロッパの場合は、それが自転車の世界で整っています。ちゃんと指導者もいて、仲間もいて、ちゃんとピラミッドの中で強い選手だけが上がっていくという仕組みが仕上がっている。ところが今の日本というのは、まだまだ情報が少ないので我流でやらないといけない、高校に上がっても部活もないので続けるモチベーションを維持するのは難しいし、指導者もいないから強くもなりにくいという現状があります。そこを変えていきたいなっていうのが、Bike is Lifeの挑戦です。─海外で自転車でもそうですけども、行って良かったなと思うことはなんですか?視野が広がった事ですね。私は高卒で大学行ってる人生はやったことはないんですけど、ただ、それに勝るとも劣らない出会いと経験を積むことができ、それが間違いなく今に繋がっていますので、海外にいた2年間が飛躍的に成長したという気はします。─自転車乗る世界と乗らない世界って何が違いますか?人力で走る魅力があります。自転車の上でしか感じれないような感覚ってあって、見る景色もそうですし、流れる時間すらも違います。また、海外に行って思うことなのですが、自転車って飛行機に乗せられるので、どこにでも一緒に行けて一緒に走れます。そして、自転車をやってるだけで世界中で友達できるんです。世界走ってたらサドルの上で友達ができて、夜一緒に飯を食べる、なんてことができるのは多分車じゃ無理ですし、オートバイでも無理ですし、たぶん自転車だけなんです。その感覚を知ってるか知ってないので全然違うと思います。そこが素晴らしさかなと思います。─海外ではコミュニケーションツールにもなる得るんですね。なりますね。ちょっと自分の方が乗るのが速かったら早かったら一目置かれるし、すげえなってなるし、そういうのが身近で短時間でできるというのも自転車の素晴らしさだと思います。山田さんがされている事業についても聞いていきます。─自転車のサブスクやカフェなど色々されていると思うんですが、どんなことをされているんですか?そうですね。自転車のサブスクは、自転車に乗りやすくするための一つの方法かなと思っています。みんな自転車に乗れるのですが、自転車楽しく乗ることは実はそんな簡単なことではありません。きっかけがないからできない。そのきっかけ作りとして、まず自転車の価格の高さのハードルを取っ払いたい。月々5000円で、いつでも始められていつでも辞められる。いい季節だけ乗ることができるとかが一つハードル下げるかなと思っています。もう一つは、壊れたときにすぐにメンテナンスします。高い自転車を買うと高いメンテナンスがかかるという恐怖感というか壁というのを取っ払いたいと思っています。もう一つが拡張性、例えばクロスバイクに乗る方が増えて、それは素晴らしいことでずっと乗って頂きたいのですが、途中で旅がしたい、レースに出たいとか競技してみたいとなった時の拡張性はクロスバイクにはないんです。うちのマウンテンバイクなら、レース出られますし、旅もできます。趣味嗜好の変化に柔軟に対応できる自転車ってありそう実はないんです。そんな事を考えて、サブスクを始めました。Bike is LifeのHPはこちら─様々な事業を通して自転車に乗るハードルを下げるということをされていると思うんですが、今後はどのような展開をしていきますか?今、クラブハウスやカフェを出店させていただいたりサブスク形を作った事で、事業の下地はできたかなと思っています。あとは、それぞれの事業を伸ばしていくいうことが今後の目標になります。そして、今あるチームをプロ化させたいという目標も、その延長線上にあります。それらの事業を総合的に行う事で、日本独自の自転車文化の創造につながるのではを期待しています。─ママチャリが1万円で買える時代に月5,500円ってちょっと高いなって印象を持つ方もいらっしゃると思うんですが、どういうアプローチをしていく予定でしょうか?時代的にもすごくいい流れが来てるなと思ってます。ママチャリに乗る人もまだまだ多いです。ただ、お洒落な自転車に乗る。自転車って何か環境にし、健康にもいいしっていう意識は10年前と比べてかなり広がってると思います。当然スポーツの方も増えてますし、自転車にかける消費額がずいぶん上がってはいるので、追い風だと思っています。同時に同時に自転車が壊れて、もしくはサビだらけになって乗らなくなった人も多くいます。パンクしてしまったけど、修理に時間がなくて錆だらけになって、埃まみれになって触りたくなります。そして廃棄される。ということを経験している人からすると、修理が無料で範囲内でやってくれるというのは、やっぱ一つ受けがいいポイントではあるので、その価値を伝えていくっていうのは大事かなと思っています。いま、5,000円となってるんですけど3,000ポイントバックしてるんです。実質2,000円です。─ポイントバックはどのように考えたのですか?Bike is Life立ち上げた時、最初は販売したんです。100台販売し終わったときに、ふと虚しくなったんですよ。あれっ…こんな気持ちで作ったのに…その後、繋がりが作れない…販売するっていうモデルは、お客様からのアプローチがなければその後はわかりません。ちょっと一つの難しさ感じました。だったら貸そうと思ったんです。そして、貸した後に繋がりを作るためにはどうしたらいいんだと考えて、ポイントバックにして使うためにカフェなど来ていただいて、試していただいて、そこで結果、ライフスタイルに変わるきっかけが作れたらいいんじゃないかなって思いました。自転車に対しての並々ならぬ想いにとても惹きつけられました。様々な角度からアプローチしていく山田さんの今後がとても楽しみになりました。Packerとのコラボなんてこともあるかもしれません。