こんにちは!編集部の永仮です。今回は、いつもの「The旅」という記事とは少し毛色が違います。しかし、私たちは多くの方々にインタビューをしていく中で気づいたことがあります。「旅は、人と出逢うともっと楽しい」ということで、今回は福岡県の南部に位置する、自然豊かな場所「みやま市」で創業130年の老舗企業「吉開のかまぼこ」の再建に奮闘している、林田茉優さんにこれまでの活動や後継者未定問題、今後の活動に関してお聞きしました!私自身も大学1年生の際、福岡大学の授業を通して吉開のかまぼこの復活に携わらせていただきました。林田さんには1年生の頃からずっとお世話になっており、今回は尊敬する先輩としても取材させていただきました!この記事を読んで「みやま市」に興味を持っていただけると嬉しいです。みやま市に行った際はぜひ「吉開のかまぼこ」に立ち寄ってみてください!林田茉優(右)2020年創業CON株式会社代表、株式会社吉開のかまぼこ社長。1997年、福岡県出身。福岡大学在籍時にベンチャー起業論の受講を通して、「後継者未定問題」に興味を持つ。その後、2021年に全国の後継者未定問題の解決を目指し、CON株式会社を創業。現在は株式会社吉開のかまぼこの社長として、再建も託されている。─まずはまゆさんの人柄について教えてください!林田:前に出るのが好きな、目立ちたがり屋です。笑大体いつも笑っているので、何でも楽しめてしまうタイプですね。小さい頃からブラスバンドをしていて、高校進学の際もブラスバンドを本気で取り組める環境を求め、精華女子高校に進学しました。何にでも全力で取り組む姿勢は、小さい頃から今に至るまで、変わっていません。永仮:僕から見たまゆさんのイメージも、全く一緒です。何に関しても1人で進めるのではなく、チーム一丸となって周りを巻き込みながら進めていく印象があります。「吉開のかまぼこ」との出会い─「吉開のかまぼこ」を知ったきっかけを教えてください。林田:大学4年生の時に「痛くない注射針」を製造されていた「岡野工業株式会社」さんが、後継者問題で廃業したことをテレビで知りました。その時に、「こんな素晴らしい企業が廃業するのか」という衝撃とともに、「後継者未定問題」が非常に深刻な課題であることに危機感を持ちました。自分が社会に出て素晴らしい企業で働けたとしても、後継者がいないという理由で廃業になるかもしれないと思い、この問題が自分ごとのように感じました。そこから後継者問題にフォーカスして4年生の活動をスタートしました。まずは日本の後継者未定問題の調査をするため、一般財団法人日本的M&A推進財団に訪問しました。その中で最初に紹介してもらったのが「吉開のかまぼこ」でした。まさかのかまぼこでした。笑実際に工場に訪問して吉開さんと話していく中で、お客さんのリクエストに応える吉開さん夫婦の熱意や完全無添加を極める職人としての魅力に惹かれました。実際に廃業した際も、多くのお客様に復活を願う声が多くあり、私の中では「第二の岡野工業」だと思いました。永仮:なるほど。これが社会的な課題でありつつ、林田さん自身も”もったいない”と感じて、ビビッときたということですね。この課題の解決は自分のためでもあり、結果的に社会貢献にも繋がりますね。製造再開までの壁─去年、製造が再開し、試食会がありましたね!僕自身もまさかかまぼこが食べられる時が来るとは思っておらず、感慨深かったです。製造再開に至るまで、工場や周りの住宅地の問題、素材の仕入れなど、多くの困難があったと思います。多くの人から「諦めた方がいい」という声もあったと思いますが、どのように捉えていましたか?実際、どのように乗り越えたのかもお聞きしたいです。林田:実際、色んな人から「もう諦めた方がいい」と言われました。しかし、吉開さん自身は「諦めたくない」と言っていて、吉開のかまぼこを待っているお客様も沢山いる。商品を作る側と、それを買うお客様の存在も明確な中で、なぜ第三者が諦めた方が良いというのか、私の中では諦める理由がありませんでした。もちろん、すぐにお金にならないとか、時間がかかるとか、ビジネスとして捉えるなら諦めるしかありませんでした。でも私にとってはお金的な利益という以前に、まだ若いからこそ様々な経験や人脈、知恵が自分の財産になる、今後の仕事においても人生においてもプラスでしかないと感じました。吉開のかまぼこは、プロのM&A会社からも、「ここまでの経営難に陥っている企業は再生できない」と言われるほど、超難関企業でした。でも、もし超難関企業を再建できたら、吉開のかまぼこだけでなく、ほかの企業の手助けにもなると考えました。逆に再建できなかったとしても、なぜ再建できなかったのか、そこから学べることも大量にあると思いました。失敗しても成功しても、私の人生のこれからにとっては絶対プラスになると思いました。それが諦めないエネルギーになりました。正直、最初はビジネスと思って取り組んでいませんでした。気付いたら仕事になっていましたね。吉開のかまぼこがそこまでのこだわりを持っていなければ、私もここまで取り組んでいませんでした。そこまで情熱を持たせてくれる吉開のかまぼこと吉開さん夫婦に惹かれましたね!永仮:もし、吉開のかまぼこが添加物を使っていたり、誰でも作れるかまぼこの製造をしていたりしたら、そのまま廃業していたと思います。僕自身も試作会の際に作ったかまぼこをゼミの先生にプレゼントしました。先生の娘さんは卵アレルギーをお持ちで、これまでかまぼこを食べたことがありませんでした。娘さんは人生で初めてのかまぼこを食べることに。そこで初めて「かまぼこの味」を知ってもらえました。かまぼこそのものはもちろん、かまぼこを「食べる」という経験も提供することができました。これは僕自身も鳥肌が立つほど嬉しかったです。事業継承への第一歩─2021年、吉開のかまぼこの新たな歴史が始まりましたね。林田:そうですね!事業継承してくださる会社がまさかのシステム会社、フロイデ株式会社でした。笑フロイデ株式会社が吉開のかまぼこを事業継承したのには、主に2つの理由があります。1つ目は、コロナ禍でも売り上げが安定していて、その利益をどのように社会へ還元していくのかをテーマにされていました。2つ目は、エンジニア業界はスキルを身に着けた後、さらに条件の良い会社に転職する傾向があるので、離職率が高いという課題がありました。株式会社フロイデさんでは、社員の皆さんに働きがいや主体性を持ってもらえるような環境作りに取り組まれていました。この2つのテーマがあって、元々製造業のM&Aを検討されていたタイミングでご縁がありました。実際にプロのM&A企業からも、M&A案件を提示されていたらしく、その中で唯一興味を持っていただいたのが吉開のかまぼこでした。吉開のかまぼこは老舗企業で、吉開さん夫婦のかまぼこに対するこだわりに魅力を感じてくださいました。吉開のかまぼこでしか作れない、完全無添加のかまぼこを残していくことはその地域に貢献することにも繋がるし、社会性のあることなので、そのような還元の仕方の可能性にも興味を持ってくださいました。これまで、社内では他社クライアントさんのニーズを叶える業務がほとんどでした。今後は自社の商品も製造、販売していくことで社員の皆さんにも当事者意識を持ってもらうと取り組んでいる最中でした。吉開のかまぼこの「後世に残していきたい」という思いと、株式会社フロイデさんの2つのテーマが綺麗に重なりました。株式会社フロイデの代表、瀬戸口さんにかまぼこを差し上げた際、目の前で一本まるまる「美味しい!」と言いながら食べてくださいました。社員さんに分けることもなく、一本丸ごと自分で食べてくださったので、私の中でも瀬戸口さんの好感度が上がりました。笑笑永仮:フロイデさんが本業で出した利益を最適な形で社会貢献として世の中に投資していきたいという意思の元、これまでの業務で培った技術を駆使しながら世の中に届けていくことが社会貢献になるという関係性、素敵すぎますね!─吉開のかまぼこの今後について教えてください!林田:吉開のかまぼこはこれまで、地域のお客さまが商売の対象になっていました。これからは地域との繋がりも大事にしたいと思っています。しかし、これだけこだわると、こだわりに共感したお客様にしか手に取ってもらえません。ここまで原料や製法にこだわりがあるので、そこに共感、理解してくれるお客様を増やす必要があると思います。その大きな課題を解決するためには、みやま市というマーケットの中の健康志向のお客様だけでなく、日本全国の健康志向のお客様に認知していただいて手にとっていただく必要があります。みやま市でアナログに販売していく部分の強化も必要ですが、オンラインやデジタルへの調整も絶対に欠かせません。特に直接顔が見えないとなると、お客様の声を聞いて、どう反映させていくかという課題もあります。いかにデジタル上のお客様とコミュニケーションを取り合っていくかが重要なテーマになっていきます。吉開のかまぼことして、時代に合わせたその時々の手段を活用しながら事業に取り組んでいきたいと思います。また、吉開のかまぼこには「健康社会に貢献する」という理念があります。今は古式かまぼこしか製造できないので、ギフトとか贈答品メインでスタートして、高級ブランドラインを構築したいと考えています。一方で、「いかに日々の食卓に一品置いてもらえるようにするか、食べてもらいやすいような商品にするか」という課題もあります。なのでその新商品開発は、吉開のかまぼこの理念を守りながら挑戦したいと思います。─最後に林田さんの今後について教えてください!「かまぼこだけでは終われない!」という強い思いがあります。私が言うのはおこがましいですが、人の育成は非常に大事だと思っています。後継者未定問題に興味を持った身なのに、私自身が後継者を育てられなかったら意味がありません。今の工場長をはじめ、私1人がリーダーというわけではなく、誰もがリーダーになれるような組織づくりに力を入れて取り組んでいきたいし、吉開のかまぼこもそのようなモデルにしたいと思います。近年、M&A企業も増えている中でどういう人(企業)に相談をしたいか、自分なりに考えてみました。その時に、「吉開のかまぼこを諦めずに取り組んでいた女の子に相談しよう!」と思って欲しいと思いました。そういう時に、自分が直接体験した事例や経験を踏まえた上で、他の案件も成功させていきたいと思っています。👇吉開のかまぼこオンラインストア